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2009年11月3日火曜日

ゆったりゲーマーズ連載開始。

いきなり出版物は無理なんで、ちょっくらブログに物語を掲載してみることにした。
いや~、文章書くなんて、受験の時に小論文とか書いて以来じゃないかな?
就職活動のときも、そんなに文章書いた覚えがないし。
つたない文章だとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
ちなみにこの作品はフィクションです。
大学名などはすべて架空のものですのであしからず。

それでは「ゆったりゲーマーズ」のはじまりはじまり~。



ゆったりゲーマーズ第一話 「きっかけは、いつも突然」

幸子は畜産学のレポートに追われていた。
日曜日、午前9時、天気は快晴。
絶好のお出かけ日和だというのに・・・。
締め切りが迫っているため、幸子は部屋の中でパソコンと畜産学の教科書とにらめっこ。
「こんなことなら、平日、授業のあとに少しでも進めておくんだったなあ。」
ホルスタイン種の項目に目を通しながら、思わずため息が漏れる。

臼井幸子、東京にある日本畜産大学生物資源学部動物資源学科2年生。
高校の頃から生物が得意で、動物に関する仕事(主に犬、猫関係)に就ければな~と漠然と考えていた。
センター利用入試で、大学に合格。
愛媛県出身の幸子にとって、初めての一人暮らしが始まった。
都会のキャンパスライフに心躍らせながら上京したものの、思い描いたものとは随分違い、興味もない畜産学や、飼料学のレポートに嫌気がさしてきたところだ。

午後5時、ようやくレポートの目処がたち、一息入れることにした。
「都会って、もっと楽しい場所だと思ったのになあ~。」
煙草をふかしながら、また愚痴をこぼす。
「よし、散歩にいこうか、ラッキー。」

ラッキー。グレートピレニーズのメス、1歳と10か月。
上京して間もない頃、近くの愛犬パークに行った際に、1匹3万円で売られていた子犬の中から、幸子が選んで連れてきた。

「散歩」という言葉に反応し、寝そべっていたラッキーは猛ダッシュで幸子に駆け寄った。
幸子のそばに来るなり、行儀よくお座りをし、しっぽを振りながら準備が整うのを待っている。
幸子は首輪にリードをつなぎ、スコップとビニール袋を手に取った。
「それじゃあ、いこうか。」

散歩コースは、いつもと同じ。
家から徒歩15分のところにある、ゆったり公園まで。
さくら通りを通り、公園の中央広場にある噴水前のベンチで一休み。
「さすがに寒くなってきたわね~。」
もう11月、さくらも紅葉し、もうそろそろ冬の足音が聞こえてきそうである。
煙草に火をつけ、ぼんやりと景色を眺めていると、
「あれ、幸子さんじゃない。」
後ろから声をかけられた。
幸子が振り向くと、そこには満面の笑みをうかべた、同期の家子遊太が立っていた。
「なんだ、遊太じゃない。相変わらず気色悪い笑顔ねえ。何をしているの、こんなところで?」
「気色悪いとはひどいな。」
と、遊太は苦笑いをして、頭をぽりぽりとかいた。
「実は、アパートがこっちの方向でさ、サークルからの帰りってわけ。」
「ふーん。」
興味なさげに幸子が答える。
「そういう幸子さんは何やってんの?こんな寒いところで一人ぼーっとしてさ。」
「見てわからない?」
幸子はラッキーのほうを指差した。
「あ、散歩か。随分大きくなったねー、ラッキーちゃん。」
「ふふ、油断していると噛みつかれるわよ、この間のようにね。」
「おっと、そいつは勘弁だな。」
遊太は身構えた。

まだラッキーが子犬のころの話。
友人の陽子(近所にある花屋「マーメイド」の店員)のところにラッキーを連れて遊びに行った時のことだ。
店の前で談笑していたところ、遊太がふらっとやってきたことがあった。
子犬の扱いには慣れている、と遊太がラッキーに触ろうとした刹那、いきなり噛みつかれたわけ。
「手に肉の臭いでも染み付いていたかなー。」
と、遊太は困惑気味だったけど。
ラッキーは主人の気持ちをよく理解できている、と幸子は笑いをこらえるのに必死だった。

「で、最近も甲斐甲斐しく陽子のところに通っているわけ?あんた、花屋自体に用事なんてないでしょ?」
「し、失敬な!僕は花の素晴らしさに目覚めたのだよ。花と戯れていると心が落ち着くのさ。」
「うわ、気色悪・・・。」
幸子は悪態をついた。
「ったく、変人でもみるような目で僕を見ないでよ。」
いや、変人だろ、と幸子は心の中でツッコんだ。
幸子はふと、遊太のカバンがパンパンに膨れていることに気づいた。
「それにしても、随分重そうなカバンね。何が入ってるの?エロ本?」
「幸子さん、女の子がエロ本ってなんの躊躇もなく発言するのはどうかと思うよ。」
「うるさいわね、で、何なのよ。」
「サークルで使っているゲーム類が入っているのさ。」
「あー、そういえばあんた、ゲームのサークルに入ったって言っていたわね、そんなもんばっかりやっていると、彼女の一人もできないわよ。」
「幸子さんも、そんなトゲのある物言いだと、男も寄り付かないよ、お互い様だね。」
遊太はケラケラ笑った。逆に幸子は仏頂面だ。
時間の無駄だ、そろそろ帰ろうかと幸子が思った瞬間、遊太が何かひらめいたようで、
「あ、そうだ、今度うちのサークルでゲームの大会があるんだけどさ、幸子さん来ない?」
と提案してきた。
「は?そんなもんに、興味はないわよ。他をあたってくれる?」
幸子はバッサリ遊太を切り捨てた。
「そんな冷たいことを言わないでよ。実はさ、男ばかりじゃつまらないって部長が言っていてさ、ノルマとして女の子最低一人連れてくるように言われているんだよ。頼むよ、幸子さん。」
遊太は目をウルウルさせながら、懇願するように幸子をみつめた。
「相変わらず気色悪い男だね、あんたは。」
幸子の切り返しは容赦ない。が、情には弱い。
「分ったわよ、そのかわり、つまらなかったら即帰るから。」
「ありがとう幸子さん!恩にきるよ。」
「うわ、気色悪いから、その顔なんとかならないの?」
満面の笑みをうかべていた遊太に対して、さらに悪態をつく幸子。
そんな幸子の発言を遊太は気にもとめていないようだ。
「じゃあ、これが当日の予定。今度の日曜日の午後1時からだから、遅れないでね。」
と、遊太はチラシをわたしてきた。
「ん?2枚あるよ?」
「ああ、もう一枚は陽子さんの分、是非わたしておいてよ。」
「は?何で私が?自分でわたせばいいじゃない。」
「いや、直接わたすのも、何か無粋な気がしてねえ。ガツガツアプローチするのも性に合わないんだよねえ。」
「あんた、自分が陽子目的で花屋に行ってるって自白しちゃってるよ。」
「おおっと、ついうっかり。」
遊太はにやりと不気味な笑みを浮かべた。
「はは~ん、ということは、私は陽子を呼び出すためのコマってわけね。」
「いやいや、何を言ってるのさ、僕は純粋に幸子さんにもゲームの楽しさを知ってもらいたくてだねえ。」
「部長が女連れて来いってのも、嘘だろ。」
「え、いや~、その~。」
「この腐れ外道が!!」
幸子は鬼の形相でメンチをきった。
「ひい、ごめんなさい!」
遊太はすくみあがった。
「この私をコマにしようなんて100年早いんだよ!このウジ虫野郎!」
「悪かったよ、怖いからそんなに怒らないでよ~。」
遊太は両手を合わせて深々と頭を下げて謝った。
「不愉快だ!帰る!」
「あ、ちょっとまってよ~。」
ラッキーを連れて、すたすたと歩き始めた幸子を、小走りで遊太は追いかけた。
さてさて、日曜日のゲーム大会はどうなることやら。

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