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2009年11月15日日曜日

ゆったりゲーマーズ第6話 情報収集は酒場で

大衆居酒屋「大黒天万歳」。
本日行われたエリザベス女王杯で大敗した幸子は、やけ酒をあおっていた。
「くっそう、何であんな人気薄の馬が逃げ切れるのよ。人気薄だからって油断しすぎだろ、クズ騎手どもが。」
幸子はぶつぶつと独り言をもらす。
競馬で負けた後の酒は、殺意を懐かせる。
今の幸子に話しかけてはいけない。
大黒天の店主、酒蔵源三は、この爆弾に触れないように、爆発させないように注意を払いながらカウンターに立っていた。
爆発するくらいなら、いっそのこと酔いつぶれてほしいと源三は思っていた。
「ねえ、マスター!私暇なんだけどー。」
酔いが回ってきたのか、幸子が源三に絡み始めた。
「・・・。では、新しいお酒をお試しになりますか。」
源三はとりあえず無難だと思われる対応にでた。
「へえ、さぞおいしいんでしょうねえ。まずかったらぶっ殺すわよ。」
「ええ、気に入っていただけると思いますよ。」
源三は、アースクエイク並みのカクテルを出して、一気に酔いつぶしにかかったほうが安全ではないかと考えた。
しかし、万が一、幸子が酔いつぶれなかった場合、命を落としかねない。
酔いがまわった客の舌には、アルコール度数の強い酒はきつすぎるからである。
ここは居酒屋歴12年の腕を信じ、真っ向勝負するしかあるまい!
源三は腹をくくった。

「お待たせいたしました。」
源三は、黄色い液体の入ったロックグラスを幸子の前に置いた。
「ほー、これがマスターお勧めの一品なわけね。どれどれ。」
幸子は、一気に飲み干した。
「このフルーティーな味わい・・・。最近どこかで出会ったことがあるような。」
「今お試しいただいたお酒はこれです。」
源三は、幸子の前に1本の酒瓶を置いた。

「あー、マンゴーか。最近何かと見る機会が多くなったものねえ。」
今朝飲んだ野菜ジュースに、マンゴーが入ってたなあと思い出しながら、幸子は答えた。
「なかなかおいしいわね。また今度飲みにこよう。」
幸子は、この酒が気に入ったようだ。
源三はほっと胸をなでおろした。

マンゴーリキュールのおかげで、酒からのメッセージは、殺意から癒しに変わった。
ひとしきり酒を楽しんで、そろそろ帰ろうかと席を立とうとしたとき、正面のポスターが目に留まった。
「あれ、マスター。なんでゲームのポスターなんて貼ってるの?」
正面にでかでかと貼ってあるのに、今まで気づかなかったのも、間抜けな話である。
ポスターには「Magic the Gathering」というカードゲームのポスターが貼ってあった。
「ああ、この間、ゴブリンっていうおもちゃ屋の店長が飲みに来てね。店の宣伝のために貼ってくれないかって頼まれたのさ。うちのお客さんは大学生が多いからね。」
「ふーん、あそこの店長がねえ。」
見渡すと、いろんなお店の宣伝ポスターがいたるところに貼ってあった。
珈琲処のポスターまであった。
「こんなに宣伝ポスター貼るなんて、随分気前がいいじゃない。」
「もちろんタダってわけではないよ。例えば、ゴブリンさんところは、毎週のように大会やらオフ会やらでお店に学生が集まってるらしいから、うちの店の宣伝をしてもらってるのさ。遊んだ後の飲み会はうちがお勧めだよってね。」
「なるほどね~。」
謎が解決したことに満足したのか、幸子は席を立ち、マスターに1万円札をつきだした。
「ありがとうございました。またよろしくお願いします。」
おつりを受け取り、幸子は店を出た。

「Magic the Gatheringねえ。どんなゲームなんだろう。今度遊太にでも聞いてみるか。」
競馬で負けたことなどすっかり忘れ、幸子は軽やかな足取りで北千住の駅に向かった。

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