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2009年11月10日火曜日

ゆったりゲーマーズ第5話 CUCCO(後編)



午後7時。幸子のアパートにて。
幸子はベランダでビール片手に煙草をふかしている。
陽子は部屋の中央にあるテーブルに「CUCCO」のカードを広げて、説明書を読んでいる。
陽子の後ろにあるソファーの上では、ラッキーが退屈そうに寝そべっている。
「ねえねえ、幸子ちゃん、大体ルールは分ったわよ。ただ、このゲームは3,4人いたほうが面白そうね。」
「へえ、サシ勝負のゲームではないんだね。どんなゲームなの?」
陽子は、幸子に説明しはじめた。


ルール説明
①まず全員に1枚ずつカード(-4~15の20種類)を配り、値が一番大きい人が親。
②札の値が大きい人から好きな席に座って、ゲーム開始。
③親は全員に1枚ずつカードを配る。残ったカードは山札として、中央に置く。
④それぞれ自分のカードを確認し、交換するかどうか決める。スタートは親の右隣の人から。交換する人は、自分の右隣の人とカードを交換します。最後、親まで順番が回ってきたら、親は、自分のカードを山札と交換するかどうか選んで、終了。
⑤全員の交換が終了したら、カードオープン。一番数字の小さい人が失格となりゲームから抜けていく。失格になった人はチップをポットに入れる。支払額は、ラウンド数が増えるごとに増えていきます。
⑥親換え。親の右隣りの人が次の親となりゲーム再開。→③に戻る。

この①~⑥のひと区切りをディールといいます。

数ディール繰り返し、最終的に残った一人が勝者。
勝者はポットに入っているチップを総取りできます。
ここまでを1セットといいます。

失格者も復活して2セット目に入ります。
最初の親は1セット目の勝者となります。
これを繰り返し、チップが払えなくなった人が出た時点で全ゲーム終了。
チップが一番多い人が優勝となります。

次に特殊なカードの説明。
15:クク 手札にきたら無条件に勝ち
14:人間 交換を要求してきた相手を失格にできる
13:馬 交換を要求してきた相手に見せ、1人とばしてカード交換をさせる。
12:猫 交換を要求してきた相手がもっているカードの、元の持ち主を失格にする。
11:家 馬と同じ。
-4:道化 交換要求してきた人、交換要求した人を失格にできる。
むやみやたらとカードの交換をすると、痛い目を見ることもあるということです。
これがCUCCOの面白いところ。


「なるほどねえ。確かにこれを2人でやると、面白みに欠けるわねえ。強いカード引いた人が勝つ運ゲームになりそう。」
「ごめんね、幸子ちゃん。折角誘ったのに・・・。」
陽子が申し訳なさそうに謝る。
「ふふ、今から誰か呼び出そうか。」
幸子が悪戯っぽくニヤリと笑った。
「え?今からでも大丈夫?」
「ここから歩いて20分くらいのところに、今日絶対来そうなやつがいるよ。ちょっと連絡してみるね。」
そういうと、幸子はベランダにでて電話をかけはじめた。

30分後。ピンポーン。チャイムが鳴った。
幸子は玄関の扉を開けた。
「こんばんは~。」
遊太が息を切らせて入ってきた。両手にはコンビニの袋。
「遅いぞ、パシリ。」
幸子から容赦ないツッコミが入る。
「いや、いきなりだったもんだからさ。それにパシリって・・・。日に日に扱いがひどくなってない?」
遊太はうらめしそうに幸子を見た。
「ふふ、逆に今日呼んでやったことに感謝してほしいくらいだわ。」
「はいはい、感謝してますよ。ほい、頼まれてた酒とつまみ。」
遊太は幸子にコンビニの袋を差し出した。
「毎度~。」
今日の幸子は悪戯っ子である。
「遊太君、こんばんは。ごめんね、いきなり呼び出して。」
陽子は申し訳なさそうな顔をする。
「陽子さん、こんばんは~。いや~陽子さんからゲームのお誘いとは光栄だなあ。」
遊太は満面の笑みを浮かべた。分かりやすい奴。
「じゃあ、パシリも到着したことだし、とっとと始めようよ。」
「幸子さん、だからそのパシリっていうのはやめてよ~。」

「じゃあ、まずは親決めからね。」
陽子は全員にカードを配った。

幸子:猫 12
陽子:馬 13
遊太:バケツ -1
陽子が親。
「ねえねえ、幸子ちゃん、その猫の絵、すごくかわいくない?」
陽子がうれしそうに話す。
「確かにいいイラストね。でも書いてることがちょっと怖いわよ。私の呪いはさかのぼるって・・・。」
「幸子さんにはピッタリの、げふ、げふふん。」
「遊太、今言いかけたことをもう一回いってみ。」
幸子は手をボキボキ鳴らせながら、遊太を睨みつけた。
「いやいや、なんでもないよ。ささ、陽子ちゃん、ゲーム早速始めようよ。」
「はーい。」
陽子の右手に遊太、左手に幸子が座ってゲームスタート。

1セット目。1ディール。
「最初のディールだから、1点分のチップを中央に出してね。負けた人はチップ取られちゃうからがんばって。」
陽子はチップを中央に置き、楽しそうにカードを配りはじめた。その間に幸子と遊太はチップを中央へ。
配り終えて、カードの山を中央に置く。
「じゃあ、遊太君から、交換するかしないか宣言していってね。」
「了解です。どうしようかな~。・・・よし、幸子さん、交換しよう。」
「ふ、お前はもう死んでいる。」

幸子の手札:道化 -4
遊太の手札:3
この場合、交換を要求した遊太は、道化の効果で失格となる。
交換は成立し、幸子の手札に3のカードがわたる。

「うわ、道化持ってたのかー。序盤から容赦ないな~、幸子さん。」
「あんたがヘボいだけよ、遊太。」
幸子は遊太を蹴落としたことに上機嫌。
次は幸子の番である。
「ん~、このカードで勝つのはちょっと厳しいわねえ。陽子、交換しよう。」
「パス」

幸子の手札:3
陽子の手札:家
家の効果で、幸子は陽子をまたいでその隣のプレイヤー(この場合は陽子が親なので、山札)
とカードを交換することになる。

「あ、家を持ってたのね。じゃあ、山札から一枚。げ、人間がでてきた。」
山札から人間がめくれた場合は、失格となる。よって幸子も失格。

「あら?もしかして私の一人勝ち?」
陽子は不思議そうに首をかしげる。
「この立ち上がりは不安だわ。前回のWizardにつづいて、陽子の圧勝だけは阻止しないと。」
幸子の勝負魂に火がついたようだ。
「いや~、陽子さんは幸運の女神だねえ。」
遊太はうっとり陽子を見つめた。勝負の勝ち負けはどうでもいいようだ。

ここで1ディールが終了。失格になった2人はポットに1枚ずつチップを入れる。
残りチップ
幸子:24点分
陽子:25点分
遊太:24点分

「で、陽子さん以外は失格になったから、2セット目に入るの?」
と、遊太。
「いいえ、最初の3ディールまでは、例え失格になろうと、負けようともゲームは続けられるわ。4ディール目から失格者、負けた人が抜けていって、最後に残った人が勝者になるみたい。」
陽子が説明書を見ながら解説した。
「じゃあ、今度は遊太君が親ね。お願いね。」
「はい、よろこんで!」
遊太はえらいはしゃぎようだ。
「居酒屋じゃねえよ、ここは。」
幸子がツッコむ。
2ディール目なので、3人は中央に2点分のチップを置く。
遊太がカードを配り、残りのカードを中央に置いた。
「じゃあ、幸子さんからスタートだね。」
「よっしゃ、今度は負けないよ。」
幸子が交換しようかどうかなやんでいるところで、
「クク!」
と陽子から宣言があった。
「え?」と、幸子と遊太。

陽子の手札:クク 15
このカードを持っているプレイヤーは「クク」と宣言して、プレイヤーの交換をストップさせ、即座に全員の手札を公開させて、ゲームを終了させられる。

「え~、まじで~。これで陽子2連勝じゃない。引きが良すぎるわよ。」
幸子がぶーぶー言いはじめた。
「まあまあ、幸子ちゃん。勝負はこれからだから。」
陽子がなだめる。

ちなみにこのディールでの手札。

幸子:9
陽子:クク 15
遊太:馬 13

よって一番数字の低い幸子が負け。ポットに2枚チップを入れる。

3ディール目。幸子が親。賭けチップは3点分。
「じゃあ、陽子からスタートね。」
「はーい。どうしようかな~。じゃあ、ノーチェンジで。」
陽子は相変わらずニコニコしている。
「随分手札がよさそうですね、陽子さん。じゃあ、自分はチェンジで。」
遊太が幸子に交換を要求。

遊太の手札:ライオン -3
幸子の手札:8
交換成立。
「くっ、遊太、なんてカードを交換してくれたのよ。この恨みはいつか必ず・・・。」
幸子がぼやいた。

幸子の番。
「さすがにこれじゃ、勝負できないわ。山札と交換しましょう。」

山札:猫 12
猫の効果は、現在もっているカードのもともとの持ち主を失格にする。つまり、ライオン -3のもともとの持ち主である、遊太が失格となる。

「うわ、幸子さん、ひどいよ~。」
遊太が情けない声をあげた。
「あははは、こんな弱いカードを私に回してきた罰があたったのよ。いい気味ね。」
幸子は大笑い。
「あれ、でも手札ライオンのままじゃん。結局私負けちゃうんじゃない?」

交換が終わりカード公開。
幸子:ライオン -3
陽子:7
「うわ、なんか最悪の展開だわ。」
幸子が頭を抱えた。
「よかった~。交換するかどうか迷ったけど、うまくいったわ~。」
陽子はほっと胸を撫で下ろす。
幸子と遊太は3点分のチップをポットに入れる。

さて、4ディール目。いよいよここから脱落者が出始める。
現在のチップ
幸子:19点分
陽子:25点分
遊太:21点分
今回の賭けは4点分。陽子が親。

「よし、僕からだね。じゃあ早速交換しようか、幸子さん。」
「死ね。」

幸子の手札:道化
遊太の手札:バケツ -1
道化の効果で、遊太は失格。幸子の手札はバケツに変わる。

「ひ、ひどい、幸子さん。さっきから幸子さんに殺されてばっかりだ。」
「まあ、あんたが私に勝とうなど、100年早いってことよ。それにしても、あんたの引きは最悪ね。またこんな低いカード回してきてさ。」
幸子は不満げにぶつぶつ文句を言った。
「さすがにこれじゃ勝負できない。陽子、交換!」
「はーい。」

幸子:バケツ -1
陽子:お面 -2

「うぐ、さらに低いカード持ってたのね。」
幸子はがっくり肩を落とす。
「さすがに今回は無理かな~って思ってたけど、運がよかったみたい。」
結局、陽子はノーチェンジ。
一番数値の低い幸子の負けとなる。4点分のチップをポットに入れる。
失格した遊太も4点分のチップを支払う。

ここで、2人が抜けて陽子一人が残ったため、1セット目が終了。
ポットに入っているチップは、生き残った陽子の総取りになる。
現在のチップ数
幸子:15点分
陽子:43点分
遊太:17点分
「うー、陽子の圧勝だけは避けねば~。」
「さ、幸子ちゃん、目が怖いわよ。」
「幸子さん、この恨みは必ず2セット目で・・・。」

2セット目以降は、幸子と陽子が、遊太を失格地獄に追い込み、実質、幸子と陽子の一騎打ちの形となった。
その結果、遊太のチップがゼロになりゲームセット。

結果
幸子:24点分
陽子:51点分
遊太:0点

「あー、悔しい、最後の1ディール勝てば私の勝ちだったのに!」
幸子は手札の道化を投げ飛ばして、後ろに倒れた。
「最後クク引いてなかったら負けてたわよ~。危なかった~。」
陽子はほっとした様子だ。
「いや~、途中から完全に戦意喪失してたよ~。交換要求する度に、とどめを刺されるんだもん。」
遊太は負けたにも関わらず、うれしそう。本来の目的は勝つことではないからだろうか。
「それにしても、遊太!あんた弱いカード流しすぎ!おかげで何回も負けちゃったじゃない。」
幸子がブーブー言いはじめた。
「あははは、今日の運のなさは自分でもびっくりなんだよ。手札にくるカード全部が弱いカードだったからねえ。」
遊太は失格地獄に追い込まれたものの、幸子に仕返しができたことに満足なようだった。
「今回はみんな楽しめたみたいでよかったわ~。」
陽子が胸をなでおろした。
「本当にね。陽子、このゲームはあたりだったわね。結構楽しめたわよ。」
幸子も満足したようだ。

その後、11時過ぎまで、酒を飲みつつ談笑。
「いやー、飲んだ飲んだ。それじゃあ、そろそろお暇しようかな。」
遊太が立ち上がった。
「おう、帰れ帰れ。もう用は済んだからね。いいパシリっぷりだったよ。」
「幸子さん、相変わらずひどいな~。まあいいや、陽子さんにもよろしく伝えておいてよ。」
「はいはい。」
幸子は部屋から出ていく遊太に手を振った。
陽子はソファーに横になって眠っていた。酒には弱く、ビール一本飲んだところでダウン。
すーすーと寝息を立てている。
幸子はベランダにでて、煙草に火をつけた。
「今日はいい休日だったなあ。」
満足げに笑みをうかべながら、煙草をふかした。

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